「如何ですかね?」
「面白れぇ」
 下街に赴いた真朱はまず妓楼を訪ね、仕事前のある人物に親分衆の総元締めへのつなぎを頼んだ。
 知人は快く了解し、紹介状を書いてくれた。その書状と企画書、上等の酒を片手に、年端のいかない小娘が大の男も縮み上がる大親分と対で盃を交わす。奇妙な光景である。強面の下っ端たちが怪訝な顔をして遠巻きにしている。
「これに関しては全商連よりコチラ向きですから。ここは親分衆の皆様にぜひとも力を貸していただきたい」
「俺ら以外の誰に出来るんだこんなこと。細かい話はこっちが煮詰めていいんだな?」
「もとよりそのつもりです。不備があれば状況に応じて変更して構いません。くれぐれも不正のなきよう睨みを利かせてくださいな。そして折角ですけど、これにかかわる方は参加を自粛していただきたいがどうか?」
「当然だな。まぁ任せな嬢ちゃん。いい儲け話を運んでくれたぜ」
「主催者には面白味に欠ける企画ですが、その代わり確実に儲かります。年に一度のお祭りですから、楽しまなければ嘘でしょう」
 片頬だけを吊り上げてニヤリと笑う。
 一見ほっそりとしたお姫様なのに、李真朱という少女は癖のある笑みが似合いすぎる。
「さすがは音に聞こえた朱李花か。貴族の小娘が代表だなんて聞いたときには鼻で笑ったもんだがな」
 真朱は笑った。
 笑い声はケケケ。美少女台無し。
「貴族なんて名ばかりの馬の骨ですから」
 名門紅家、その当主の養女でありながら、真朱は絳攸とは立場が違う。
 絳攸には選べる自由を。
 真朱には選ばなくてよい自由を黎深に与えられた。そこにあるのは厳然とした線引きで、李真朱は紅家の者ではなく、ただ黎深の娘であるだけだ。真朱が紅家を利用するのは勝手にしろ、しかし紅家が真朱を利用することを許さないが故の李姓。土台無理な話なのだ――真朱が貴族の娘であろうとすることなど。それが国で一ニをあらそう名門であればこそ尚更だ。それ以前の問題が山積み過ぎて話にならない。まずオトコが無理。
 己の名に甘えたまま、真朱はいまだ何も選んでいない。



 ―――それも時間の問題だろうが。



「――まぁ、そういうことでお願いします。わたくしの部下を使っても構いません話は通しておきます」
「時間がねぇからありがたく借り受けるかな。もうちょい早く話を持ってきてくれりゃーウチのものだけでもなんとかなったんだが」
「ギリギリですいません。もともと内輪での悪ふざけのつもりで企画したものでしたから、一般に開放するつもりはなかったんです。人が多くなるほど儲けも出ますが、面倒くさいでしょう?」
「確かに。今回は試行となるだろうな。どうなることか俺も楽しみだぜ」
 元締めが頷く。
「肝心の話が後回しになりましたねー。わたくしの取り分は全体の一割でいいですよぉ」
「全体のっつったか小娘!! この計算だと興業主の利益は二割五分ってとこじゃねぇか半分持ってく気か!?」
 ばれたか。
「冗談です冗談。いいとこ二分五厘ってトコですかね。つまり利益の一割。妥当でしょう?」
「交渉が下手だな嬢ちゃん。あっさり額を下げすぎだぜ?」
「さぁてどうでしょう。コレをどうぞ」
 大の男もチビりそうな元締めの一喝に澄ました顔で、次の札を切る。といっても大したものではないのだが。
 手渡された書翰に目を通した元締めは歯を剥き出した。
「…………欲があるんだかねぇんだかわっかんねー嬢ちゃんだなオイ。二分五厘で手を打たざるをえないじゃねーか畜生」
「そーですかー? 利益なんて会社が潤沢に出しているんです。これはもともと、そういう類であるべきのお金です。親分の広い心に感謝しますよ」
 チッと元締めが舌を打ち、親指を噛み切り書状に血判を押した。様になった堂々たる了承の意だ。さすがの真朱も刀を使わないとは思わなかった。野蛮でビビる。
 真朱はそろりと視線を泳がせたが、自分も親指を噛み千切って血を出すしかないようだ。朱肉を持ってくる手下もいないし手持ちの刃物もない。真朱は父と兄に包丁以外の刃物は簪とて許されていないので本当に丸腰だ。信用のなさがこんなところで災いした。あー。
 息を吸って、吐いて、見よう見まねで親指を噛み、真朱も血判を押した。
「ほんっと、貴族の嬢ちゃんには惜しいクソ度胸じゃねーか」
 朱肉も刀も持ってきてくれなかったくせにと恨みがましい目になった。他にどうしろと。
「そらどーも………でも痛いです」
 親指を押さえ、半泣きになったのはご愛嬌ということで。



 後に親分衆総元締めは少女についてこう語る―――「ウナギみたいな嬢ちゃんだった」と。
 つかみ所がないという性格をわざわざ鰻なんぞに例えられた真朱はいくらなんでもそりゃねーだろとこっそり涙することになる。
 ある青年が呼ぶマタタビに続く珍妙な肩書きが真朱に増えた。下街に、尊敬と畏怖とともに流布するその名も鰻姫
 泣ける。
 もう好きに呼べばいいのだドチクショウ。返事をするかは別の話だが。




 珍名はともかく―――打てるだけの布石は打った。
 後は王様を飾りたてて本番を待つのみ。






 秋晴れの晴天。
 豊穣祭は最終日は貴陽の近隣からも訪れた人々で、常以上の人出に溢れていた。
 警備に借り出された十六衛士の控えの間。勅命何ぞで命じられたのは静蘭ただ一人なものの、あながち口実だけの仕事ではなかったようだ。それなりに忙しく、祭りの空気に酔って暴れるチンピラどもををちぎっては投げちぎっては投げちぎっては投げ涼しい陽気の中いい汗かかされた。浮かれるのは構わないが、自分に迷惑かけるのはやめて欲しい静蘭の仕事振りは冷酷非情だった。同僚が遠巻きにしているのに気づきながらも無視して不味い茶をすすり、笑顔でもぎ取った休憩時間を利用して、無事予選を通過した楸瑛と絳攸を笑いに―――もとい、秀麗が気炎を上げている女装大会最終選考を冷やかしに行こうとしていた矢先のこと。
「こんにちはぁ……」
 むさい十六衛士の控えの間、掃き溜めに鶴が舞い降りた。
 その鶴が怪鳥だと知る静蘭のみがどよめきと歓声が湧いた中で茶を噴出して慌てて立ち上がった。

「ごほっ、真朱様!? こんなところに何を!?」
 予想外のむさ苦しさに腰が引けていた真朱は、静蘭のいつもと同じ涼しげなたたずまいにちょっと安堵した。
 ほわっと笑う、はにかんだ小さな笑みが酷く健気に映った。

 え、同一人物? 静蘭は我が目を疑った。

「えへへー、そろそろ休憩をお取りになる頃だと思いましたので、会いにきちゃいましたぁ。ほんの少しでいいですから、一緒にお祭り回りませんかぁ?」
 一生懸命勇気を出して柄の悪い十六衛士の控え室にまでやってきた風情に見えないこともない姫君のお誘いを受けた静蘭に、いっせいに鋭い視線が突き刺さる。
 それなりに似合っているからこそ恐ろしい初めて聞く真朱の猫なで声に、当の静蘭は一瞬思考が停止した。
「―――………はい?」
 思わず聞き返す。
「ほんのちょっとでいいですから、一緒にお祭りまわってくださいお願いしますぅ」
 聞き間違いじゃなかったらしい。猫なで声も。
 頬を染め目元を潤ませる芸の細かさに、いつもの人と為りを知らなければ真摯に対応してしまったかもしれない。恐るべし猫被り特大の猫。きっと猫又だ。
「………………………光栄です。参りましょうか」
 その演技にのるまで、静蘭は胸中で壮絶な葛藤を繰り広げた。いつもいつもいつも彼女の予想外の行動に面を食らう。藍楸瑛すら手玉に取る男が笑顔を作るまで要した時間は今までで最長だった。しかもちょっと口元が引き攣った。
「わぁ! ありがとうございますぅ!」
 ぱぁっと顔を輝かせ、静蘭の差し出した腕を恥ずかしそうに取る。取った瞬間顔が元に戻った。いつもの飄々とした中性的な表情に戻り、やっぱりそうだとは思ったものの完璧に演技だったのだと静蘭は安心した。
 脳が沸いたのかと心配した。
 
 マジで。
 
 ちょいちょいと細い指が動く。耳を貸せといっているのだろう。静蘭は少しかがむ。
「すいませんねー、ちょっと付き合ってください。大会に行く道中でコトは済みますんで」
 こそりと囁く。
「……はぁ」
 目的がさっぱりわからないものの、大会へ向かう道中で済むというなら静蘭に否やはない。
「こんなところにいていいんですか?」
「衣装も化粧も終わりましたもん。もう準備なんてありません」
「…………その節はご迷惑をおかけしました」
 つい、謝ってしまう。
「? いえ静蘭殿に謝られることは何もないんですが……」
「あぁ、いやついなんとなく」
 弟の女装手伝ってくれてありがとうなんて言えないし、何より言いたくないお兄ちゃんは失言に目を反らした。





「あの、一体なんなんですか? 心臓が止まるかと思ったんですけど」
「あっはっはーそんな馬鹿な。静蘭殿はいい心臓をお持ちじゃないですか」
 ケタケタ笑う真朱はすでにすべての演技をやめている。いつもの少女に静蘭のほうも安堵した。アレはなんだったんだ一体。
「白昼夢かと」
「酷いです静蘭殿。勇気を振り絞って逢引にお誘いいたしましたのにぃー」
 そう言うならば、同じ口でケケケと笑わないで欲しい。
「まぁ深い意味はないです。静蘭殿が驚くかなーと。ぜんぜん驚いてくれませんでしたけど」
 絳攸だったらひっくり返って壁に頭を打ち付けるくらい驚いて動揺して楽しませてくれただろうにと思う妹。ちなみにその後物凄く叱られることなどわかりきった結末であるが。
「……あまり顔に出ないだけです。心臓が止まるかと思ったと言いましたでしょう」
「そーかなー?」
 折角企んだいたずらが不発に終わった悪童の表情が、祭り仕様で華やかに着飾った姫ぶりとまるでそぐわない。





「―――あなたが敵に回ったら、正直恐いと思いましたよ」





 静蘭と腕を組みつつ機嫌のいい足取りで先行していた真朱が目を見開いて振り返った。
「は?」
「あ、いえ」
 今日は何故か失言が続くと静蘭は内心で舌打ちを漏らす。
 何故も何もない。真朱はまず見た目で警戒心が湧かないのだ。細く小柄で非力な少女は静蘭であれば腕一本も使わず取り押さえることが可能だろう。
 裏表のない言動は、大切に守られて育った天真爛漫な姫君に見えるが――何も知らないような顔をしながら、物慣れた思慮深さを以って、その容姿に気が緩んでうっかりと口走った言葉を聞き逃さず、ばらばらの欠片を繋ぎ合わせるだけの思考能力がある。そう、裏はなくても奥はあるのだ。しかも頭の回転が速く、臨機応変で変幻自在だ。常識にとらわれないというより合理的だと判断したら常識なんぞ蹴っ飛ばすので、予測が難しい。一つの布石で三つも四つもの伏線を意識せずにに張り巡らせ回収していく真朱は天性の策士だ。囲碁などの盤上遊戯は得意中の得意だろう。
 春に後宮で、彼女がさして役に立たなかったのは能力不足ではなく、ただ単にそのような手段を用いることを少女が嫌っていたからだ。やろうとすら思わないから、宮廷暗闘など出来やしないと本人ですら思っている。
 無意識で、己の中の規律に厳然として忠実に善良であろうとしている人間らしさを持っている少女だから、静蘭の敵に回るようなことなどよっぽどでなければありえないし、鮮やかな手際には素直に賞賛を惜しまないが―――故意に、己の欲望にだけ忠実に、人を人とも思わないような外道であったなら―――。


 殺していた。


 真朱によく似て正反対の人間の性質の悪さを、静蘭は骨身に沁みて知っている。
「………じゃあ、敵に回る前に殺しておきます?」
 ―――やはり、真朱には聞こえていたようだ。
 静蘭が失言を繕わなければあえて追及はしなかっただろう。逆に取り繕ったからこそ、今のうちに話をしておこうと決めた判断力には畏れ入る。
「いいえ」
 その判断と面と向かって尋ねた度胸に敬意を評して、静蘭は正直に答えた。
 真朱はじっと静蘭を見つめたまま表情を変えない。単純な否定だけでは額面どおりに受け取らない思慮深さは感じたとおりの代物だ。
「貴女が敵に回るとしたら、わたしが間違っているのだと思いますね。間違っているからといって、わたしが止まるかどうかはわかりませんが」
「……こわいなぁ」
 最も敵に回したくない人物だと思っているのはお互い様だった。
「そう―――ちょうど、この辺でした。偶然にしては出来過ぎているように思えますから告白しますと、わたしは春に府庫で顔を合わせる前に、遠目に貴女を見知っていました。二年ぐらい前でしたか」
 祭りの喧騒の中、人の波がさざめく一帯は、下街の入り口だ。
 真朱は目を丸くした。
「えぇ? 二年ぐらい前にこの辺でって……初耳なんですけど。なんか変な目立つことでもやらかしてましたか?」
「いえ。当たり前のことだと思いました。当たり前すぎて、誰もが通り過ぎていましたが―――貴女は猫を、拾っていました」
「ねこ?」
 真朱は特に動物愛護精神に溢れているわけではない。今も昔も猫を飼ったことはない。
 強いて育てている動物を挙げるとしたら紅家別邸の池の鯉。ときどき餌をやる別名非常食。
「あったかな、そんなこと……」
「猫の遺骸でした」
「―――あぁ」
 おぼろげに記憶が蘇る。
「軒にでも轢かれたのでしょう。酷い有様の骸で、誰もが遠回りをしていた中、貴女一人が避けないで、肩掛けに包んで、丁寧に埋葬していました―――それはそれはそーれーはー嫌そうな顔で」
 ……オチがついた。
「ここは話の流れから、静蘭殿はわたくしの博愛精神に感動したとでも続くところじゃーないのかよ……いえ博愛精神なんぞは全く身に覚えありませんし確かに嫌な顔をしていたとは思いますけどっ」
 そんなものたいした持ち合わせはないと自分でも思っていたが。
「そんな嫌そうな顔してましたかそうですか……」
 我ながらどうかと思う。
「えぇ今にも吐きそうな顔でしたね。そんなに嫌ならわざわざ手ずから埋葬しなくてもいいのにと。あんなに嫌そうな顔されて埋葬されたのでは、猫も報われないとまで思いましたよ」
 そこまで言うか。
 そこまで言うような、顔をしていたのだろう。事実、真朱は気持ち悪くて仕方なかった。内臓が潰れ肋骨と目玉が飛び出しているような遺骸だった。思い出したら気分が悪くなった。
「血ィ嫌いなんですよ」
「血を厭うのは、人として当然じゃありませんか? 縁のない死体はどんなものでも気持ち悪くて当たり前です。だけどそこに遺体があれば、埋葬するのも人として当然の行いだとも思いました」
 少女以外の誰もが、猫だったモノに少女が触れるまで、気づかなかったが。
 哀れな命の残骸を前に、生理的な嫌悪をあからさまに顔に出す人も珍しい。剥き出しにするには、嫌悪という感情は醜すぎる。醜い己を自覚したい人はいない。だからこそ、誰もが遠目で、死んだ猫に触れなかった。嫌悪を感じない距離でなら、人は存分に悼むことが出来る。
 哀れな命の残骸を遠目に、なんて可哀想にと同情すれば、優しい自分に手軽に酔える。
「――悲しそうな顔をしていたら、偽善者だとでも思ったでしょう、わたしは捻くれていますから。他の人と同じように通り過ぎてたならば、すれ違っただけで記憶に残ることはなかったでしょう。貴女は当然のように嫌悪して、だけど当然のように埋葬しました。当たり前のことを、当たり前に出来る人なんだと、気づいて手伝おうとしたときには、全部終わってましたけど」
「いや手伝えよ! 気持ち悪かったのに!!」
 口調を繕うのを素で忘れた。
「わたしは当たり前のことを、教わらずに育ちましたので」
 謎の家人がちらりと過去を匂わせた。これはもしや出血大サービスかもしれんと真朱は恨み言を怒涛のように連ねるのをやめておいた。
「今は少し、旦那様やお嬢様のおかげで、出来るようにはなったと自負していますが―――貴女が敵に回ったとき、それはわたしが、当たり前のことを捨てようとしているときだと思います。貴女なら止めてくれると信じて―――"いいえ"―――それがわたしの答えです。柄にもなくだいぶ喋りましたが、まだ不足ですか?」
 何が目撃されているかわかったもんじゃないと真朱はつくづく思った。これからは少し衆目を気にしよう。
「買い被ってくれますねぇ……嫌な顔で猫埋めただけなのに……しかも本気の静蘭殿を止める自信、ありませんが。えぇ全く」
「わたしもありませんね。自分を止める自信も、貴女を向こうに回して無事でいる自信も。そのときは、真剣勝負となるでしょう。わたしは手強いですよ?」
「嫌な予想しないでくださいお願いします恐いから」
 想像するだに恐ろしい。実際、事を構えたら瞬殺されるような気がする。真朱の自己評価は低い。
 低いが―――能力云々はともかく、二十一世紀人のモラルを買われたと思えばなんとか納得できる。
 世界も国も時代も違う。
 目の前の静蘭は当たり前に剣を佩いている。真朱的には武人全員が銃刀法違反だそのへん普通に歩かないで欲しい。物騒でかなわない。
 彩雲国では、とても近くで人が死ぬ。
 それはにとって、当然のことではない。
 真朱は目の前の綺麗な青年を改めて眺めて、要は自分と同じなのだとうっすらと思った。
 ―――道を踏み外したときに、堕ちて行く自分に最期まで手を差し伸べてくれる人を知っている。最期まで手を伸ばしてくれる人に、勝手に落ちた自分の十字架を背負って欲しくはない。決して背負って欲しくはない。





「俺が貴方の最後の抑止となるのなら―――貴方が信じた俺の価値観が、俺の中で壊れたとき、俺が狂ったとき、貴方が俺を止めてくれますか?」
「えぇ」





 全く同一のものを求め、全く同一のものが返された気負いのない肯定に、泣きそうになるほど安堵した。




「だったら、貴方が踏み外したときは、俺がぶん殴って引っ張り戻して、秀麗さまに引き渡ししょう」
「でしたら、貴女が静かに狂ったときは、わたしが引っぱたいて首根っこ掴んで李侍郎にお届けしますよ」

 目をそむけずに受けて立った少女に、目をそむけず受けてたった静蘭は、艶やかに笑った。
 真朱は初めて、静蘭の前で素顔の笑みを浮かべた。
 その笑顔は驚くほどに、年相応の少女の浮かべる咲初めの微笑に――よく、似ていた。










(長くなったから切る。とりあえず静蘭とはちょっと歪んだ、それこそオットコらしい友誼を結べたと思うんですけど・笑。静蘭、燕青とは精神年齢が近いんです)




モドル ▽   △ ツギ





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